ひとりたりない

兄弟の事故死をきっかけとした家族の崩壊と再生を描いた児童書。
主人公は小5の女の子。
中1のお姉ちゃん、小2の弟と両親の5人家族。


ボールを追いかけて道路に飛び出そうとした弟をとっさにかばった一番上のお姉ちゃん。
反動で代わりにお姉ちゃんが車道に飛び出し、トラックの下敷きに。
兄弟の目の前で交通事故で亡くなってしまいます。
そこから家族の崩壊が始まり…。


両親は酒におぼれ喧嘩ばかり。
弟は自分を責め、赤ちゃん返り。
このままではいけないと、女の子はおばあちゃんに助けを求めます。


おばあちゃんのおかげで家族が再生していく物語。
表紙からして、ただことじゃないなと思わせる子供達の表情。
娘に読ませる為ではなく、自分が読みたくて手に取りました。
内容が重いので、高学年向きの児童書かもしれません。


おばあちゃんの言葉が胸に響きます。
「生きてゆくということは、つなわたりするとおなじなんだよ。
 一歩一歩が落ちるかもしれない一歩なんだよ。」


「時は確実にすぎてゆく。
 一歩一歩着実にふだんどおりに、時のながれにのって歩いてゆくのがたったひとつの
 正しいやり方。」


この本に出会ったのは、ママ友が急逝し途方に暮れていた頃。
とても元気な人だったのに、小さな子供達を残し天国へ旅立ってしまいました。
あまりに突然の出来事に、無念さと共に自分の気の持ちようが無く…。
青空を見ても、「綺麗だなぁ。でも○○ちゃんがいない。」
何をしても彼女の事ばかり考えてしまう時期がずっと続いていました。
そんな時、このおばあちゃんの言葉が沁みたものです。


今回の震災で家族を失ったたくさんの人達。
避難所では普段通りの生活なんて出来ないでしょう。
深い心の傷を癒すのはかなりの時間を要すると思いますが、
どうか負けないで欲しいと願います。
ゆっくり、でも確実に笑顔が増える日に一歩一歩近づいて行けると祈ります。


大事な人を失って途方に暮れている大人に読んでもらいたい一冊です。

ひとりたりない (おはなしルネッサンス)

ひとりたりない (おはなしルネッサンス)